スモールビジネスの財務をデトックス — Beancount流
乱雑な元帳を30日で落ち着いた、現金に自信のあるビジネスへ変える—プレーンテキスト会計を活用して。
TL;DR
- 分離・簡素化・ロック:最小限の勘定科目表、一貫したインポート、そして自動残高チェックで帳簿を固定。
- 重要項目を可視化:COGS、間接費、キャッシュランウェイを
bean-query
で即座に取得。 - ノイズ除去(未使用サブスクリプションや重複ツール)と 良好な習慣のコード化(週次照合、月次締め、領収書添付)。
- 税務シーズンを退屈に:ステートメント、領収書、残高を一元管理し、検証可能に。
なぜ「デトックス」か?
小規模事業の財務が乱雑になると、単に見た目が悪いだけでなく、コストが増大します。無駄な支出が隠れ、本当の利益率が見えにくくなり、税務シーズンは慌ただしい宝探しに変わります。30日間の財務デトックスは、資金の流れと漏れを特定し、複雑さを排除し、シンプルで再現可能なルーティンを制度化するリセットです。
Beancount は 透明性・スクリプタビリティ・検証可能性 を備えているため最適です。ブラックボックスのソフトと違い、プレーンテキストの元帳はすべての数値が説明可能です。ディレクティブとクエリでチェックとバランスを自動化し、自己監査システムを構築できます。本ガイドは4週間の計画でその実現方法を示します。
Week 0 — ベースラインを設定
クリーンアップの前に、堅固な基盤が必要です。この週は財務世界の構造を定義します。
最小限の勘定科目表を作成
勘定科目表は財務システムの骨格です。ここではミニマリズムを目指します。将来必要になるかもしれないすべての費用に口座を作らないでください。今日使っている必須項目だけで始め、後から追加できます。乱雑な科目表は誤分類を招き、ハイレベルな分析を困難にします。
シンプルで効果的な例:
; Core entities
2025-01-01 open Assets:Bank:Checking USD
2025-01-01 open Assets:Bank:Savings USD
2025-01-01 open Liabilities:CreditCard:Business USD
2025-01-01 open Income:Sales
2025-01-01 open Expenses:COGS
2025-01-01 open Expenses:Overhead:Rent
2025-01-01 open Expenses:Overhead:Utilities
2025-01-01 open Expenses:SaaS
2025-01-01 open Equity:Opening-Balances
検証可能な残高をロック
プレーンテキスト会計の最大の強みは「現実を主張できる」ことです。balance
ディレクティブは「この日付にこの口座は正確にこの金額だった」と Beancount に指示します。合わなければエラーが発生します。これが第一の安全網です。
開始時は pad
と balance
を組み合わせて、銀行ステートメントから口座を初期化します。pad
は取引を作成し、正しい開始残高へ強制し、差額をエクイティ口座に振ります。
; Initialize from statements
2025-01-01 pad Assets:Bank:Checking Equity:Opening-Balances
2025-01-01 balance Assets:Bank:Checking 12345.67 USD
注意点:pad
は必要最小限に使用してください。繰り返しの照合ミスを隠すための手段ではありません。
Week 1 — フローを分離・簡素化
構造ができたら、資金の流れを明確にします。
ビジネスと個人を分離
小規模事業の金銭管理の黄金律です。資金を混同すると混乱と税務上の頭痛のもとになります。
- ビジネス専用の銀行口座とクレジットカードを1つずつ持つ。
- 元帳でも
Assets:Bank:Business:Checking
、Liabilities:CreditCard:Business
のように分離。 - 自分への支払いは
Equity:Owner-Draws
への配分として記録。個人支出をビジネス口座から直接分類しない。
ベンダーカテゴリを標準化
AWS、Google Cloud、Vercel をそれぞれ別口座にしません。すべて Expenses:Cloud
のような単一の論理カテゴリにマッピングします。分析しないマイクロ口座は作らない。目的はパターンを見える化することであり、ベンダーごとに口座を増やすことではありません。
Week 2 — 入力と領収書を自動化
手入力は遅く、エラーが起きやすく、持続不可能です。今週はレジャーを自動化する仕組みを構築します。