メインコンテンツまでスキップ

パススルーを超えて: Beancountユーザーのための完全なSコープ税ガイド(2025)

· 約7分
Mike Thrift
Mike Thrift
Marketing Manager

ビジネスをスリムかつ税効率的に保つために S‑corp を設立しました。しかし「パススルー」という概念はシンプルに聞こえても、実際には給与税、法人レベルの課徴金、そして州ごとの重要な違いが絡んできます。

ここでは 2025 年の S‑corp の税金の仕組みと、Beancount で監査に耐えるクリーンな記録を保つ方法をご紹介します。

2025-07-26-s-corp-tax-guide-for-beancount-users


課税対象は何か(どこで)

S‑corp 構造の核心は利益の取り扱いです。3 つの要素から成り立ちます:パススルー所得、法人レベル税、給与税。

  • 連邦レベルのパススルー: S‑corp は通常、連邦所得税を支払わない(普通の事業利益に対して)。代わりに、その利益(クレジットや控除などの税項目も含む)は Schedule K‑1 を通じて株主に流れます。株主は現金を実際に受け取っていなくても、個人の確定申告書にこの所得を報告します。重要なのは、この K‑1 の利益は 自営業税の対象外 であることです。
  • しかし…法人レベル税が適用されることも: 「法人税なし」のルールは絶対ではありません。特定の場合、S‑corp は直接税金を負担します。最も一般的なトリガーは 組み込み利益(BIG)税(最近の C‑corp からの転換)と 過剰純受動所得税 です。
  • 給与税は実在する: これは株主兼従業員にとって最も重要なルールです。事業で働く場合、合理的な報酬 を W‑2 給与として支払わなければなりません(税優遇分配を受け取る前に)。この給与は FICA(社会保障・医療保険)と所得税源泉徴収の対象となります。

給与の概要(2025 年) payroll

株主兼従業員であれば、給与計算と標準的な給与税フォームの提出が必要です。四半期ごとの Form 941(所得税源泉徴収と FICA)と年次 Form 940(連邦失業税、FUTA)を提出します。

2025 年の主な税率は次の通りです:

  • 社会保障(OASDI): 賃金上限は $176,100。税率は 6.2%(従業員)と 6.2%(雇用者)で、上限まで適用されます。
  • 医療保険(Medicare): 賃金上限はありません。税率は 1.45%(従業員)と 1.45%(雇用者)で、全賃金に適用されます。
  • 追加医療保険税: 年間 $200,000 超の給与に対して 0.9% が源泉徴収されます。この部分に雇用者負担はありません。

法人レベル税の可能性

頻度は低いですが、S‑corp 自体が負担する税金を把握しておく必要があります。

  • 組み込み利益(BIG)税: 事業を C‑corp から S‑corp に転換した場合、5 年間の認識期間があります。この期間中に C‑corp 時代に保有していた資産を売却すると、S‑corp が法人税率で課税されます。計算は Form 1120‑S の Schedule D で行います。
  • 過剰純受動所得税: 以前の C‑corp 時代の蓄積利益(AE&P)を持ち、受動所得(賃貸料、ロイヤリティ、利子など)が総収入の 25% を超える場合に適用されます。
  • 四半期見積もり: BIG 税、受動所得税、その他の再取得税の合計が $500 以上 と見込まれる場合、S‑corp は四半期ごとに見積もり納付が必要です。2025 年のカレンダー年の期限は 4 月 15 日、6 月 16 日、9 月 15 日、12 月 15 日 です。

州・地方の落とし穴 🗺️

連邦ルールが州や市でもそのまま適用されるとは限りません。税務取扱いは大きく異なります。

  • カリフォルニア: S‑corp は毎年 $800 の最低フランチャイズ税 と、純利益の 1.5% の税 を支払う必要があります。
  • ニューヨーク市: NYC は S‑corp の選択を認めていません。連邦 S‑corp は通常、NYC の一般法人税の全額対象となります。
  • 選択的パススルー事業体(PTE)税: 連邦の $10,000 SALT 控除上限への回避策として、多くの州が S‑corp に対し法人レベルで州所得税を支払う選択肢を提供しています。ルールは複雑で変動しやすいため、PTE 選択前に必ず CPA に相談してください

オーナーが支払うべきもの

株主として、個人の税務状況は S‑corp の業績と直結します。

  • K‑1 所得の 1040 への反映: 個人の Form 1040 の Schedule K‑1 に、受け取った所得・損失・控除・クレジットをすべて記載します。
  • 四半期見積もり税: K‑1 所得は源泉徴収がないため、Form 1040‑ES を使って個人の四半期見積もり税を IRS に納付し、未納罰金を回避します。
  • QBI 控除(Section 199A): パススルー所得は Qualified Business Income(QBI)控除 の対象となり、事業所得の最大 20% が控除可能です。高所得者の場合、控除額は S‑corp が支払う W‑2 給与額で制限されるため、「合理的報酬」 の金額がさらに重要になります。

基本的な申告書類

最低限、年間コンプライアンスには以下が含まれます:

  • Form 1120‑S: S‑corporation の所得税申告書。
  • Schedule K‑1: 各株主用。
  • 給与関連書類: 四半期 941、年次 940、従業員用 W‑2/W‑3。
  • Form 1099‑NEC: 独立請負業者への $600 以上の支払い。

Beancount: 「どこへ行った?」と疑問を抱かないためのマッピング

明確な勘定科目表は、これらの動く要素を追跡するために必須です。

スターターアカウント

Assets:Bank:Operating
Assets:PrepaidTax:Federal ; S‑corp レベルの見積もり支払い用
Expenses:Payroll:Wages
Expenses:Payroll:Employer:SocialSecurity
Expenses:Payroll:Employer:Medicare
Expenses:Payroll:Employer:FUTA
Expenses:Tax:Federal:S-Corp ; BIG/受動所得税費用用
Liabilities:Payroll:Withholding:{Federal,SocialSecurity,Medicare}
Equity:Distributions

取引例

給与実行(会社側+源泉徴収)

2025-02-28 * "Payroll - February"
Assets:Bank:Operating -10350.00 USD
Expenses:Payroll:Wages 12500.00 USD
Expenses:Payroll:Employer:SocialSecurity 775.00 USD
Expenses:Payroll:Employer:Medicare 181.25 USD
Liabilities:Payroll:Withholding:Federal -3000.00 USD
Liabilities:Payroll:Withholding:SocialSecurity -775.00 USD
Liabilities:Payroll:Withholding:Medicare -181.25 USD

オーナー配当(給与以外)

2025-03-10 * "Shareholder distribution"
Assets:Bank:Operating -5000.00 USD
Equity:Distributions 5000.00 USD

法人レベル見積もり税(該当する場合)

2025-04-15 * "1120-S entity-level estimate (BIG/passive tax)"
Assets:Bank:Operating -1200.00 USD
Assets:PrepaidTax:Federal 1200.00 USD

重要な提出期限のマーク

2026-03-15 note "E-filed 2025 Form 1120-S; furnished K-1s to all shareholders."

サニティチェック(bean-query

クエリで記録の整合性を確認します。

給与 vs. 配当 YTD(合理的報酬チェック)

SELECT account, SUM(position)
WHERE (account "Expenses:Payroll:Wages" OR account "Equity:Distributions")
AND year = 2025
GROUP BY account;

K‑1 のハンドオフは記録されたか?

SELECT date, narration WHERE narration   "K-1";

実務的なヒント(IRS に電話させない) ✅

  1. 「合理的報酬」を文書化。職務内容、時間配分、市場給与データへのリンクを簡潔なメモに残し、正式な W‑2 給与で支払います。
  2. 給与と配当を明確に分離。混同しないこと。Beancount の元帳で区別が一目で分かるようにします。
  3. 州の規則に注意。CA の最低税や NYC の非認識など、州ごとの要件を把握しておきます。
  4. 見積もりを見直す。年途中で収入が大きく変わったら、個人の 1040‑ES と S‑corp の見積もり支払いの両方を調整します。

本ガイドは一般的な情報を提供するもので、税務アドバイスではありません。事業状況はそれぞれ異なるため、必ず資格を有する CPA に相談し、個別の状況に合わせた指導を受けてください。