Beancount に適したビジネス銀行口座チェックリスト(2025年)
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プレーンテキストの総勘定元帳で運用する企業口座を選ぶ際は、金利やカード特典だけでは判断できません。重要なのは客観的な要素――安定したデータ供給、予測可能なコントロール、そしてスクリプト化された会計ワークフローに適合するセキュリティ方針です。
本チェックリストは、エクスポート内容、資金移動の速さ、手作業を減らすコントロールなど、検証可能な要素に着目します。口座開設やインポータ開発に時間を投じる前に、候補を絞り込むために活用してください。
1. データエクスポート:妥協できない最重要項目
銀行が「Beancount フレンドリー」といえるのは、クリーンで機械可読な明細を提供してこそです。
要件 | 重要な理由 | 確認すべき事項 |
---|---|---|
安定した取引ID(FITID など) | Beancount のインポートスクリプトで重複排除を確実に行える | 1か月差のある2つの CSV/OFX をダウンロードしIDを比較 |
計上日、受取人、メモ、金額、通貨 | 推測に頼らず正確な仕訳ができる | 広告資料ではなく実際のエクスポートを確認 |
ヘッダーと構造が変わらない | フォーマット変更によるリグレッションを防ぐ | バージョンサンプルをリポジトリに保存 |
PDF明細と小切手画像へのアクセス | 文書ワークフローで添付資料を扱える | 保管期間と1画像あたりの 料金を確認 |
参考: Beancount インポートガイド、OFX Banking Specification。
2. 安全性と預金保険
規制上の保護範囲が、勘定科目体系を変更せずに保持できる資金量を決めます。
- FDIC 保険付き銀行は、預金者1人・銀行1行・所有区分1種類あたり25万ドルを保証します。複数銀行へのスイープで保証枠を拡張する場合は、最新の提携銀行リストと明細への記載方法を確認してください。出典:FDIC。
- NCUA 保険付き信用組合も同額を National Credit Union Share Insurance Fund を通じて補償します。出典:NCUA。
口座メモに保険の構造を記録し、内部統制で基準額超過の理由を説明できるようにしましょう。
3. 決済レール・速度・上限
支払機能の充実度は、サプライヤ支払や給与、返金をスクリプトで自動化できるかを左右します。
- Same Day ACH は現在、1決済あたり 100万ドル、1日3回の決済ウィンドウを提供し、ワイヤを使わない緊急支払に最適です。出典:Nacha。
- RTP®(Real-Time Payments) は The Clearing House が提供し、24時間365日稼働、2025年時点の1取引上限は 1000万ドル(銀行による)。出典:The Clearing House。
- FedNow® Service の参加金融機関も拡大中です。送金・受取の双方に対応しているかを確認しましょう。出典:Federal Reserve Services。
自動化を設計する前に、出入金の上限、承認フロー、APIでこれらのレールが利用可能かをヒアリングしてください。
4. オペレーション制御と自動化
運用面の深さが、単に利用できる口座とスケールできる口座を分けます。
- 複数ユーザーの権限管理と承認 は、誤送金や不正送金のリスクを減らします。
- サブアカウントやエンベロープ(提供会社によっては20口座程度まで)で、予算区分を 勘定科目に直接マッピングできます。評価例:Bluevine のサブアカウント、Relay の口座構造。
- API / Webhook は照合作業を高速化し、準リアルタイムのダッシュボード構築を支援します。Mercury は 決済・データ API を公開しており、CSVを保管しつつインポートも効率化できます。
初期プランで使える機能と、上位プランで解放される機能を整理し、チェンジマネジメントを計画しましょう。
5. Beancount 向け銀行スコアカード
候補を客観的に比較するため、加重ルーブリックを適用します。自動化工数に直結するデータエクスポートと決済機能には特に重みを置きましょう。
指標 | 0–2 | 3–4 | 5(理想) |
---|---|---|---|
データエクスポート | PDFのみ、即席CSV | ヘッダーが不安定なCSV | 安定したCSV/OFX、永続ID付き |
保険 | 明細がない | 月次PDFのみ | PDFに加え取引画像 |
支払機能 | ACHのみ・計上遅延 | ACH + ワイヤ送金 | Same Day ACH + 即時決済レール |
コントロール | 単一ログイン | マルチユーザー、基本権限 | 細かな権限・承認が利用可 |
サブアカウント | なし | 2〜5口座 | 10〜20口座以上、個別情報あり |
API / 連携 | なし | 基本的な会計連携 | 公開API、Webhook、サンドボックス |
手数料・上限 | 情報が不透明 | 透明だが制約多い | 明確で寛容な上限・公平なFX |
サポート | メールのみ | メール+チャット/電話 | ビジネス向け専任サポート・SLA |
スコアはベンダ評価ノートに記録し、口座導入の意思決定をエビデンスに基づかせましょう。
6. 申込前のデューデリジェンス
- 実際のエクスポートサンプル を既存顧客またはテスト口座から入手。
- インポートスクリプトの動作確認 を行い、重複発生時の挙動もテスト。
- 明細の保存ポリシー と、銀行変更時に過去データを取得する方法を確認。
- 資金利用可能時期のポリシー(モバイル入金、現金預入、受取ワイヤなど)を把握。
- 手数料・上限の開示資料(ACH上限、海外送金手数料など)を内部Wikiに保管し、将来の監査に備える。