Ciscoは2026年度を、四半期売上高**$172億5,000万ドル**(18%増)、純利益**$38億6,000万ドル**(51%増)で締めくくった。ネットワーキング売上高は28%、製品受注全体は35%増加し、ハイパースケーラーからのAIインフラ受注は通期で$93億ドルに達した。需要を示すシグナルは際立っている。貸借対照表の対応も同様で、在庫は**$56億9,000万ドル**と前年を80%上回った。CiscoはAI主導のネットワーキングサイクルに入っている。問われるのは、受注をどれだけ効率よく売上高と現金へ転換できるかだ。
主要な決算数値
2026年7月25日までの3カ月を前年同期の第4四半期と比較すると、次のようになる。
| 指標 | 2026年度第4四半期 | 2025年度第4四半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | $17,252M | $14,673M | +17.6% |
| 売上総利益 | $11,063M | $9,280M | +19.2% |
| 営業利益 | $4,264M | $3,087M | +38.1% |
| 純利益 | $3,859M | $2,550M | +51.3% |
| 希薄化後EPS | $0.97 | $0.64 | +51.6% |
| 営業キャッシュフロー | $5,400M | $4,200M | +27% |
実質的な営業レバレッジが働いた。売上高は$25億8,000万ドル、売上総利益は$17億8,000万ドル増えた一方、営業費用の増加はわずか$6億600万ドルだった。Ciscoは増加した売上総利益のうち$11億8,000万ドルを、営業利益の上積みとして確保した。
営業利益より下の項目では、受取利息およびその他の損益が前年の$8,800万ドルの損失から$6億6,900万ドルの利益へ転じた。この$7億5,700万ドルの改善が、純利益を営業利益より速いペースで押し上げた。中核となる営業成績自体も好調だったが、最終利益の51%増には営業外の追い風も含まれている。
通期では、Ciscoは売上高$633億3,000万ドル(12%増)、GAAP営業利益$153億7,000万ドル(31%増)、純利益$132億7,000万ドル(30%増)を報告した。第4四半期の加速によって、それ以前の低成長局面をすでに大きく脱していた一年を締めくくった。
売上高の詳細:ネットワーキングが再び中核へ
Ciscoの製品ポートフォリオは、開示されたすべての分野で成長した。ネットワーキングは売上高の過半を占めると同時に、大規模分野の中で最も高い成長率を記録した。
| 製品・サービス分野 | 2026年度第4四半期売上高 | 前年同期比 | 売上高構成比 |
|---|---|---|---|
| ネットワーキング | $9,791M | +28% | 56.8% |
| セキュリティ | $2,226M | +14% | 12.9% |
| コラボレーション | $1,167M | +12% | 6.8% |
| オブザーバビリティ | $275M | +6% | 1.6% |
| サービス | $3,793M | 0% | 22.0% |
| 合計 | $17,252M | +18% | 100% |
今回のサイクルを牽引しているのはネットワーキングだ。 売上高は$97億9,000万ドルに達し、製品受注は40%増えた。ネットワーキング受注の2桁成長は8四半期連続となる。これは単なるキャンパススイッチの更新需要ではない。AIクラスターには、アクセラレーター、ラック、データセンター、クラウドを結ぶ広帯域・低遅延ネットワークが必要であり、システム総コストに占めるネットワークの役割が広がっている。
セキュリティは14%増の$22億3,000万ドルとなった。 Ciscoの従来の中核事業より高い成長率だが、ネットワーキングには及ばない。Ciscoのインフラを流れるトラフィックにポリシー、ID、脅威対策を組み合わせられるため、セキュリティは戦略的に重要だ。この四半期は勢いを示したものの、売上高構成比は12.9%で、ネットワーキングよりはるかに小さい。
コラボレーションとオブザーバビリティも成長したが、いずれも決算の主因ではない。 コラボレーションは$11億7,000万ドル、オブザーバビリティは$2億7,500万ドルだった。オブザーバビリティにはSplunkを通じて加わった機能も含まれるが、成長率6%、売上高構成比1.6%では、今四半期の原動力というより隣接事業である。
サービス売上高は$37億9,000万ドルで横ばいだった。 サービスのGAAP売上総利益率は69.4%と、製品の62.6%を上回るため、その安定性には価値がある。しかし製品売上高が24%増えた一方でサービスが横ばいだったため、連結売上高の成長率は抑えられた。構成比は、成長が速い一方で売上総利益率が低い製品側へ移った。
地域別にも幅広く成長した。米州の売上高は18%増の$104億ドル、EMEAは19%増の$43億5,000万ドル、APJCは14%増の$25億1,000万ドルだった。この加速は特定地域だけに依存したものではない。
マージンの動向
製品構成はハードウェア寄りに移ったが、GAAPベースの売上総利益率は製品・サービスの双方で改善し、費用面の営業レバレッジによって営業利益率も拡大した。
| マージン | 2026年度第4四半期 | 2025年度第4四半期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 製品売上総利益率 | 62.6% | 61.5% | +1.1pp |
| サービス売上総利益率 | 69.4% | 68.3% | +1.1pp |
| 売上総利益率 | 64.1% | 63.2% | +0.9pp |
| 営業利益率 | 24.7% | 21.0% | +3.7pp |
| 純利益率 | 22.4% | 17.4% | +5.0pp |
サービスより製品の伸びが速かったにもかかわらず、売上総利益率は上昇した。製品売上原価は$41億9,000万ドルから$50億3,000万ドルへ増えたが、製品売上高はそれ以上のペースで伸びた。サービス売上原価は売上高が横ばいの中、$12億ドルから$11億6,000万ドルへ減少した。ポートフォリオの両側が貢献した。
営業費用の伸びは10%で、売上高の18%増を大きく下回った。研究開発費は2.1%増の$24億3,000万ドルにとどまった。販売費、マーケティング費、一般管理費、買収関連無形資産償却費、事業再編費を合わせた項目も増加したが、売上総利益ほどの伸びではなかった。この差が営業利益率を3.7ポイント押し上げた。
通期のマージン推移はもう少し複雑だ。2026年度のGAAP売上総利益率は64.5%で、2025年度の64.9%をわずかに下回った一方、営業利益率は20.8%から24.3%へ上昇した。通期の改善は、売上総利益の構成改善ではなく、営業費用のレバレッジによるものだった。第4四半期には両方が改善したため、期末時点の収益力は通期平均より強く見える。
93億ドルをめぐる問い:受注、在庫、売上転換
Ciscoは第4四半期にハイパースケーラー向けAIインフラを$40億ドル受注し、通期合計は$93億ドルに達したと開示した。2026年度には約$40億ドルのAIインフラ売上高を計上し、2027年度には$75億ドルを見込んでいる。製品受注全体は35%増、ハイパースケーラーを除いても25%増だった。
受注は売上高ではない。売上高へ転換するには、部品、製造能力、顧客の検収、出荷、場合によっては設置が必要だ。その実行負担が表れるのが在庫である。在庫は2025年度末の$31億6,000万ドルから2026年度末の$56億9,000万ドルへ80%増えた。同じ年度比較で、売上高の伸びは12%だった。
この在庫積み増しは二通りに読める。強気の見方では、Ciscoは可視性の高い需要に備えて調達を進め、高価なAIシステムの供給が制約されるリスクを抑えている。受注残$93億ドルなら、より多くの部品と完成品を保有することに合理性がある。弱気の見方では、受注時期、ハイパースケーラーへの集中、技術移行によって、従来のネットワーク機器より速く陳腐化する在庫を抱える恐れがある。
契約済み売上高も下支えとなる。残存履行義務は7%増の$467億3,000万ドルに達し、製品$234億4,000万ドル、サービス$233億ドルとほぼ半分ずつだった。繰延収益は3%増の$297億8,000万ドルとなった。これらの残高で実行リスクがなくなるわけではないが、将来の活動の相当部分がすでに契約済み、または前払い済みであることを示している。
この議論に決着をつけるのは現金創出力だ。第4四半期の営業キャッシュフローは27%増の$54億ドルだったが、通期では売上高と利益が大幅に増えたにもかかわらず、$142億ドルと2025年度から横ばいだった。在庫が計画どおり売上へ転換されれば、運転資本から現金が解放される。在庫が売上高を上回るペースで増え続ければ、受注急増の効率性は損益計算書が示すほど高くないことになる。
630億ドル規模のネットワーク基盤をプレーンテキストで追跡
Beancount元帳では、Ciscoのハードウェア原価、ソフトウェアとサービスの採算、研究開発費、営業費用、税金、純利益を、監査可能な一つの取引にまとめる。売上高は負の貸方、原価と費用は正の借方として記録する。
; INCOME STATEMENT
; Revenue 17252; cost 6189; R&D 2431; SG&A 4368; other -669; tax 1074; consolidated net income 3859.
; Check: -17252 + 6189 + 2431 + 4368 + -669 + 1074 + 3859 = 0
2026-07-25 * "Cisco Systems, Inc." "FY2026Q4 Income Statement"
Income:Revenue -17252 MUSD
Expenses:CostOfRevenue 6189 MUSD
Expenses:ResearchAndDevelopment 2431 MUSD
Expenses:SellingGeneralAdministrative 4368 MUSD
Expenses:OtherNet -669 MUSD
Expenses:IncomeTax 1074 MUSD
Equity:Adjustments 3859 MUSD ; net income offset (reported equity set by balance assertions)Expenses:OtherNetが負の値なのは、Ciscoが純費用ではなく、その他の純利益を計上したためだ。この仕訳によって、純利益が営業利益より速く伸びた要因である営業外の恩恵を捉えている。
AI受注の売上転換を左右する貸借対照表上の数値が在庫である。これに対する契約面の裏付けが繰延収益で、流動繰延収益だけでも$169億9,000万ドルに達した。
2026-07-24 pad Assets:Current:Inventory Equity:Adjustments
2026-07-25 balance Assets:Current:Inventory 5694 MUSD
2026-07-24 pad Liabilities:Current:DeferredRevenue Equity:Adjustments
2026-07-25 balance Liabilities:Current:DeferredRevenue -16988 MUSD複数年で見る変化
Ciscoの年次推移を見ると、AIネットワーキングサイクルとSplunk買収後のコスト構造が傾きを変えるまで、ポートフォリオは緩やかにしか成長していなかったことがわかる。
| 年度 | 売上高 | 売上総利益率 | 営業利益率 | 純利益 | 在庫 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年度 | $49,818M | 64.0% | 28.0% | $10,591M | $1,559M |
| 2022年度 | $51,557M | 62.5% | 27.7% | $11,812M | $2,568M |
| 2023年度 | $56,998M | 62.7% | 27.8% | $12,613M | $3,644M |
| 2024年度 | $53,803M | 64.7% | 25.4% | $10,320M | $3,373M |
| 2025年度 | $56,654M | 64.9% | 23.9% | $10,180M | $3,164M |
| 2026年度(報告値) | $63,325M | 64.5% | 24.3% | $13,267M | $5,694M |
2021年度から2025年度までの売上高は累計でわずか13.7%増え、純利益は3.9%減少した。売上総利益率は60%台半ばを維持したものの、研究開発、買収技術、営業投資、事業再編が売上総利益をより多く吸収したため、営業利益率は低下した。
2026年度にはこの傾向が変わった。売上高は1年で11.8%、純利益は30.3%増え、営業利益率は0.4ポイント回復した。第4四半期末時点の営業利益率はさらに高い24.7%に達しており、加速は明確だ。
在庫だけが突出している。2021年度から2026年度までに265%増え、売上高をはるかに上回る伸びとなった。直近の急増の多くはAI需要への意図的な準備かもしれないが、それだけ実行に求められる水準も高まる。Ciscoは過去に例のない規模の貸借対照表上の投資を、出荷と現金へ変えなければならない。
結論:強気と弱気の材料
強気材料
- 第4四半期は売上高が18%、売上総利益が19%、営業利益が38%、純利益が51%増加し、営業レバレッジは幅広く、数値でも確認できた。
- ネットワーキング売上高は28%、ネットワーキング受注は40%増加し、受注の2桁成長は8四半期連続となった。
- 製品受注全体は35%、ハイパースケーラーを除いても25%増えており、需要が少数のAIインフラ購入者以外にも広がっていることを示す。
- 残存履行義務は$467億3,000万ドル、繰延収益は$297億8,000万ドルに達し、成長計画を支える契約上の可視性をもたらしている。
- 第4四半期の営業キャッシュフローは27%増の$54億ドルで、今四半期の利益が発生主義会計だけによるものではないことを示した。
弱気材料
- 在庫は1年で80%増の$56億9,000万ドルとなり、通期売上高をはるかに上回るペースで増えたため、陳腐化と受注転換のリスクが高まった。
- 売上総利益率が低い製品の売上高が24%増えた一方、サービス売上高は横ばいであり、製品構成比が上がり続ければ売上総利益率のさらなる改善は難しくなる。
- 売上高が12%、純利益が30%増えたにもかかわらず、通期営業キャッシュフローは$142億ドルで横ばいだった。
- 第4四半期の受取利息およびその他の損益は前年同期比で$7億5,700万ドル改善しており、純利益の伸びは営業面の改善を大きく上回った。
- ハイパースケーラー向けAI受注は巨額で、顧客が集中する可能性がある。少数の導入スケジュールが変わるだけで、売上高の計上時期がずれる恐れがある。
当サイトの見方: Ciscoは、この5年間の元帳で最も強い需要サイクルにある。製品受注の35%増、ネットワーキング売上高の28%増、残存履行義務の増加を踏まえると、この加速を単一四半期の出荷の偏りとして片付けるのは難しい。強気の評価には根拠がある。しかし在庫の積み増しは注記にすぎない問題ではなく、受注残を支える物理的な投資そのものだ。Ciscoは今、売上総利益率を損なわずに、AI受注$93億ドルと80%増えた在庫を売上高と現金へ転換しなければならない。2027年度の営業キャッシュフローが利益に追いつけば、ネットワーキングのスーパーサイクルという見方が裏付けられる。追いつかなければ、受注の見出しが実態の経済性を先走っていたことになる。