利益が出ているのに事業を静かに沈める成長率
多くの中小企業オーナーをつまずかせるシナリオがある。それは完全な失敗よりもたちが悪い。事業は黒字で、注文は次々と舞い込んでいるのに、銀行口座はどんどん厳しくなっていく。製品にも市場にも問題はない。単に、事業の成長スピードが自社の財務力を上回っているだけなのだ。
会計士はこの問題が突き当たる天井に名前を付けている。持続可能成長率だ。式はひとつだが、成長するすべての事業がいずれ向き合わなければならない問いに答えてくれる。借入をしたり、外部資本を調達したり、あるいは資金が尽きかけたりする前に、実際どこまで速く成長できるのか、という問いだ。
持続可能成長率が実際に測っているもの
持続可能成長率(SGR)とは、負債と資本の構成比率を変えずに、企業が自社で生み出す利益だけを使って売上を伸ばせる最大の割合のことだ。平たく言えば、内部留保した利益と、既存の資本構成がすでに支えている負債の範囲内で賄える、成長の「制限速度」である。
SGRより遅く成長すれば、必要以上のキャッシュを生み出すことになり、これは低リスクで余裕のある状態だ。SGRより速く成長すれば、その差分をどこかで埋めなければならない。新規の借入、新規の投資家、仕入先への支払いの先延ばし、あるいは自己の準備金の取り崩しなどだ。これらのどれもが本質的に悪いわけではないが、それぞれがリスクプロファイルを変化させ、いずれも無限には使えない。
計算式
持続可能成長率は次のように計算される。
SGR = 内部留保率 × 自己資本利益率(ROE)
これを決める要素は2つある。
- 内部留保率 = 1 − 配当性向(オーナー分配率)。これは、自分自身や株主に払い出さず事業内に留保する利益の割合を示す。
- 自己資本利益率(ROE) = 当期純利益 ÷ 平均株主資本(個人事業やLLCの場合はオーナー資本)。これは、投下資本を利益に変える効率をどれだけ高く保っているかを測る。
計算例
昨年の当期純利益が$200,000、平均オーナー資本が$800,000、自分自身への分配額が$80,000だったとしよう。
- ROE = $200,000 ÷ $800,000 = 25%
- 内部留保率 = 1 − ($80,000 ÷ $200,000) = 1 − 0.40 = 60%
- SGR = 60% × 25% = 15%
つまりこの事業は、新規の借入や外部投資家を頼らずに、自社で生み出すキャッシュだけで年およそ15%の売上成長を賄えるということだ。仮に30%の成長を目指すなら、事業はその追加分の資金をどこかから調達しなければならない。融資枠、ローン、投資家、あるいは単に仕入先への支払いを引き延ばすことでもよいが、これも一種の借入である。
参考までに、ハーバード・ビジネス・レビューが広めた研究によれば、成熟企業の多くにとって「妥当な」持続可能成長率は年10%から25%程度とされている。もし自社の計算結果がこの範囲から大きく外れているなら、内部留保率、収益性、あるいは成長目標のいずれが外れ値なのかを検討する価値がある。
黒字企業がそれでも資金不足に陥る理由
SGRの核心にある洞察は、経験豊富なオーナーでさえ見落としがちなものだ。収益性と資金の潤沢さは同じものではなく、急成長こそがしばしばこの両者を引き離す原因になる。
この失敗パターンには名前が付いている。過剰取引だ。これは高い利益率とフル稼働の受注残を抱える企業にも起こり得る。典型的な例はこうだ。小規模な製造業者が大手小売チェーンとの契約を獲得する。注文をこなすには材料の購入と人件費の支払いをすぐに行う必要があるが、小売チェーンからの入金は60日から90日先になる。売上も利益も帳簿の上では申し分ない。しかし銀行口座の残高はまったく違う物語を語る。自社のコストを支払ってから顧客からの回収までのギャップを、事業自らが埋めなければならなかったからだ。
持続可能成長率を超えて成長していることを示す典型的な前兆には、次のようなものがある。
- 売上債権が売上以上のペースで増えている。 販売量は増えているのに回収は遅くなっており、資金が未回収の請求書に固定されてしまっている。
- 自社の仕入先への支払い条件を引き延ばしている。 仕入先により長い支払い猶予を求める頻度が増えているなら、それは自己資金ではなく取引先の忍耐によって成長を賄っているサインであることが多い。
- 給与や在庫の支払いを短期借入で賄おうとしている。 タイミングのずれを埋めるために時々融資枠を使うのは普通だが、基本的な運営資金を賄うために恒常的に頼るのは正常ではない。
- 利益率は安定しているのに、手元資金は減り続けている。 損益計算書は健全に見えるのに銀行残高が下がり続けているなら、たいてい原因は収益性ではなく成長そのものにある。
これは急成長が悪いという意味ではない。急成長には資金コストが伴い、SGRはその成長のうちどれだけを自力で賄えるかを、助けを探しに行く前にあらかじめ教えてくれる、ということだ。
持続可能成長率 対 内部成長率
SGRは、それと似ているがより厳格な指標である内部成長率(IGR)と混同されやすい。IGRは、新規の負債も資本もまったく調達せず、内部留保利益だけで賄える最大の成長率である。SGRはより緩やかで、既存と同じ比率で負債を使い続けることを前提としているため、通常はIGRより高くなる。
この違いが重要なのは、自社が実際にどの種類の成長の天井に直面しているかを教えてくれるからだ。
- IGRを下回る成長は、借入にまったく頼らず、拡大をすべて利益だけで賄えていることを意味する。
- IGRとSGRの間での成長は、負債を使ってはいるものの、既存の資本構成がすでに想定している範囲内にとどまっていることを意味する。新規の借入も、条件の再交渉も、新たな投資家もいらない。
- SGRを上回る成長は、資本構成そのものを変える必要があることを意味する。これまでより比例的に多くの負債を抱えるか、新規の資本を導入するか、あるいはその両方だ。
健全な中小企業の多くは、この2つの間のどこかで運営されており、成長のすべてを内部留保利益だけで賄うのではなく、事業向け融資枠、タームローン、仕入先金融といった、管理可能で安定した水準の負債を利用している。
この計算式の限界
SGRは有用な計画上の目安ではあるが、絶対的な経営の法則ではない。留意すべき点がいくつかある。
- 安定した事業モデルを前提としている。 この計算式は、利益率、資産効率、資本構成が一定であることを前提としている。価格戦略を変えたり、コストを削減したり、期中に負債を再構成したりしている事業では、実際の成長余力はこの式が示すよりも速く変化する。
- デフォルトでは過去を振り返るものだ。 ROEと内部留保率は通常、前年の実績から計算される。利益率が急速に改善または悪化している場合、前年のSGRは今年の実態を正しく表さない可能性がある。数値が大きく動いたときは、そのつど再計算すべきだ。
- 需要については何も語らない。 SGRは、自社が資金的にどこまで賄えるかを教えてくれるだけだ。市場がその成長を実際に受け入れるかどうか、あるいはそのペースに見合うだけの採用や納品ができるかどうかは教えてくれない。
- 季節性・プロジェクト型の事業には、より短い測定期間が必要だ。 建設業、イベント関連サービス、季節商材の小売など、売上に波のある事業では、年次のSGRが実態を見誤らせることがある。四半期単位で見たほうが、実際の資金繰りの逼迫をより正確に捉えられることが多い。
持続可能成長率を実務でどう使うか
- 年末の他の財務比率と併せて毎年計算する。 ある程度きれいな当期純利益と資本の数値が必要であり、これは確定申告時期に慌てて帳簿を再構成するのではなく、日頃から帳簿を最新の状態に保っておくべき理由のひとつでもある。
- 実際の(または計画中の)成長率と比較する。 売上がSGRを大きく上回るペースで伸びているなら、資金繰りが逼迫してから慌てるのではなく、必要になる前に資金調達の選択肢を検討し始めるべきだ。
- 自分が動かせるレバーを把握する。 利益率を改善する(ROEを高める)、売上債権の回収を早める(実質的なROEも高まる)、あるいは分配を控えて事業内により多くの利益を留保する(内部留保率を高める)ことで、SGRを引き上げられる。どのレバーにもトレードオフがある。たとえば利益を多く留保すれば、短期的には自分の手元に残るキャッシュは減る。
- 実際の成長率と持続可能な成長率とのギャップは、危機ではなく資金調達の意思決定として扱う。 融資枠、SBAローン、株式投資といった外部資金調達は、計画の失敗を意味するものではない。それは、事業がSGRより速く成長するための、ごく普通で意図的な手段だ。問題があるとすれば、そのギャップにすでにはまり込んでからそれに気づくことだ。
この計算式を支える数値を正確に保つ
持続可能成長率の信頼性は、その背後にある当期純利益と資本の数値の正確さ次第であり、だからこそクリーンで最新の記帳は単なるコンプライアンス上の作業ではなく、成長の資金ギャップに、まだ手を打てるうちに気づくための手段なのだ。Beancount.ioは、透明性が高くバージョン管理されたプレーンテキスト会計を提供しており、この記事のような比率の背後にある数値を常に正確かつ検証しやすい状態に保てる。無料で始めて、開発者や財務に明るいオーナーがなぜプレーンテキスト会計に乗り換えているのかを確かめてほしい。